ビッグバンドはポピュラー音楽、特にジャズにおけるバンド形式の一つ。一般には大人数編成によるアンサンブル形態のバンド、
あるいはこの形態で演奏されるジャズのジャンルのことを指す。前者はジャズ・オーケストラ、後者はビッグバンド・ジャズと
表現をすることもある。
アンサンブルの形態としては、高度なアレンジとソロパートの組み合わせにより演奏されるため、即興演奏を主とするジャズ・
コンボとは対極を成すといえる。
ジャズのジャンルとしては1930年代と1940年代に主流となっていたスウィング・ジャズと同義語とされることも多いが、近年
ではビッグバンドの形式でスウィング・ジャズ以外(ビバップ、フュージョンなど)が演奏されることも多いため、現在では
必ずしも同義語とは言えない。
【一般的な編成】
ビッグバンドは複数の種類の楽器を組み合わせて編成される。一般的なビッグバンド(特にスウィング・ジャズを演奏する
ビッグバンド)では楽器の種類によって大きくサックス、トランペット、トロンボーン、リズムの各セクションに分けられる。
このうちトランペットとトロンボーンを総称してブラスセクション(ブラス(真鍮)で作られることの多い金管楽器で構成され
るため)、さらにブラスセクションとサックスセクションを総称してホーンセクションと呼ぶこともある。
総勢で17人前後(一部パートの省略や同一パートを複数人で演奏するなどで人数の上下がある)となるこの編成をフルバンドと
称することが多い。
【サックスセクション】
サクソフォーン(サックス)により構成されるセクション。「リード」と呼ばれることもある(リードを使った木管楽器により
演奏されるため)。
一般にはアルトサックス2本、テナーサックス2本、バリトンサックス1本の計5本で構成されることが多い。
ビッグバンドの楽譜上で単にサックスと表示される場合、一般には1番と3番がアルト、2番と4番がテナー、5番がバリトンとなる。
ただし最近では1番アルト、2番アルトのように楽器別に表示されることも多い。
サックスセクションは音色の柔らかさから、ブラスセクションの音色を和らげたり、全体としてのハーモニーを構成する際のいわば
「背骨」としての役割が期待されることが多い。また、演奏時の疲労度の差(金管楽器は唇を震わせて演奏するため、長時間にわた
る演奏は肉体的な負担が大きい)のため、ソロパートの伴奏部の演奏に多用されることも頻繁にある。
さらにパートとしての音域の広さから、サックスパート全員によるソリの演奏が行われることも多い(実際、セクション内で旋律と
対旋律とベースラインを完結させることが可能である)。一方で構造的な問題から音量や音質を極端に変えることが難しいため、
演奏者にはその部分を補うための技量が求められることがある。
【トランペットセクション】
トランペットにより構成されるセクション。4本のトランペットで構成されることが多いが、本数が3または5になることもある。
音色が直線的かつ華やかであるため、曲の最も盛り上がる部分で旋律を担当したり、対旋律を担当することが多い。
また、ミュートを装着することにより容易に音色を変更できるため、曲調に変化を与える際にきっかけとなることも多い。
1番トランペットが最も高い音域を演奏する。特にトゥッティで演奏される際にはバンド全体でも最も高い音域となり、特に高い
音を出す技量が求められる。2番、3番につれて音域が低くなり、4番が最も低い音域となる(とはいえ、一般にはトランペットで
演奏することが困難なほどの低音域とはならない)。トランペットソロを演奏する際は一般に2番(時として4番または3番)が演奏する。
【トロンボーンセクション】
トロンボーンにより構成されるセクション。一般には3本のテナートロンボーンと1本のバストロンボーンで構成される。
基本的にはトランペットと同様の役割を期待されるが、音域がトランペットよりも低音域にあるため、どちらかと言えばベースラインと
しての役割の方が大きい。
一方でトランペットよりも音は直線的でなく、音の広がりが期待できる楽器であることから、男声コーラスでいうテノールにあたるパー
トを受け持つ事もある。
【リズムセクション】
ピアノ(または他の鍵盤楽器)、ギター、ベース、ドラムスで構成されるセクション。曲によってはその他のパーカッションが加わる
こともある。基本的には曲の中でリズム(拍子)を刻み、曲調を整えることを期待されるセクションである。
ピアノ
ピアノは構成上リズムセクションとして位置づけられているが、実際にリズムを刻むことはあまりない。むしろ、ソロ楽器としての役割
や、曲中で様々なアクセントを入れて、旋律に対する応答やコードによる和音での伴奏を提供することにある。従って、ピアノは(他の
鍵盤楽器で置き換えることを別にすれば)他の楽器と置き換えることは役割上困難であり、特に、スウィング・ジャズにおいては不可欠
な存在ともいえる。
ギター
ビッグバンドにおけるギターはほとんどの場合が純粋にリズムを刻む楽器として用いられる。従って奏法的にはカッティングが主流と
なるため、ソロパート以外で目立つことが皆無であり、他のジャンル(特にギターを前面に押し出すロックをはじめとするポップス)で
ギターを学んだものにとっては退屈に感じられることがある。一方でピアノと同様にギターだけでコードと旋律を奏でることができる
ことから、ソロパートを任されることも多い。
ベース
ベースは通常はビートと同じ拍子を休みなく刻み続け、ソロの導入部(ブレイク)や曲中に曲調が変化するタイミングを除けば、その
調子が大きく変化することはない。しかしながら、ベースが欠けると曲全体が締まらなくなり、その意味では非常に重要な楽器といえる。
ドラムス
ドラムスは、リズムを刻む他に曲調の変化を呼び込むために短いフレーズを入れる事を期待される。ロックの様にドラムス自身が前面に
出ることはさほど多くなく(ソロパートを与えられることもあるが)、ベースなどと共に曲のテンポと曲調を整える(特にスウィング・
ジャズではスウィングのリズムを正確に刻む)事に主眼が置かれる。
ジャズ・オーケストラ(ビッグ
バンド)について (ウィキペディア フリー百科事典より抜粋)